サイコロを振り続けよう 「人生は、運よりも実力よりも『勘違いさせる力』で決まっている」ふろむだ
分裂勘違い君劇場というブログの方の著書。一言でいうと、「人生をうまく進めるために、『思考の錯覚』を使おう」という本でした。
ハロー効果、少数の法則、感情ヒューリスティックなど、思考の錯覚の種類はいくつか存在しています。これらをどう普段の生活に生かすか?に役立つ本です。
「世の中、実力主義でしょ?」と思っている人にお勧め。この本では、「世の中、実力主義になんてなってない」という身もふたもない現実を踏まえた上での、思考の錯覚を使った、「成功確率をあげるための方法」が書いてあります。
面白かった点をいくつか紹介していきます。
才能があるかを考えるのをやめる
「ハロー効果」という、「何か1点が優れていると、後光がさして、何もかもが優れて見えちゃうような錯覚」があります。
このハロー効果を使い、成功確率をあげるための方法とは。
当たる確率が高い時を狙って投資すること。
色んなことに小さくかける。ハロー効果が得られそうな仕事や役割に手をあげ、色々チャレンジしてみること。
具体的な数字の効果が得られることはハロー効果を瞬時に生じさせる。
わらしべ長者方式で、小さなハロー効果を大きなハロー効果にしていくこと。
面白かったのは、「自分には、本当に才能があるのか?」と悩むことに時間を使うことをやめる、ということです。
成功の要因としては、才能よりも運や思考の錯覚の方が大きいので、「自分には、本当に才能があるのか?」と不安がって消耗するのは投資効果が悪すぎる。自分に才能があるかないか? を悩む時間があったら、その時間を、悩んでる暇があったら、一回でも多くサイコロを振ること。
才能に結びつけちゃうことは、結局は自分への言い訳なんですね。
思い出しやすさを考える
人間の直感は、「すぐに思い浮かぶ情報」を過大評価する傾向がある。
もし、デザイナーとしてやっていこうと人なら、しばらく連絡を取っていない友人と連絡を取ってみるのが良い、と著者。そうすれば、例えばその友人の会社で「どのデザイナーを選ぶか?」と言う判断に置いて、選ばれる確率は飛躍的に高くなる。自分が思っているよりも、はるかに高くなる。
重要だなと思ったのが、「自分の何を、相手が思い浮かびやすくするか」と言うこと。
自分の優秀さをアピールするより、自分がどう言うポジションなら力を発揮できるかの、具体的なイメージを相手にインプットする方がいい。
自分の持っているスキルを細分化して掛け合わせることですね。
PVとCVRのバランスを考える
自分という人材のマーケティングは、ウエブマーケティングと一緒。
「時間」という資源を、PV向上とCVR向上のどちらにどれだけ投資するか、という投資戦略を誤らないことが大切。
「コツコツ実力をつけよう」と頑張るのではなく、ある程度の実力が身についたら、まだCVRが低くても、じゃんじゃんPVを増やす戦略の方が、結局効率がいい。
多くの人が、「成功は、運よりも実力によって決まる」という思考の錯覚を持っている。
成功の主要な要因が運であるということは、「サイコロを振る回数を増やさないことには、成功確率はなかなか上がらない」ということを意味する。PVの絶対数を増やさなければ、なかなかいい環境には有り付けない。
「一貫して偏ったストーリー」を主張せよ。自分の人生と判断を二重化
大きな錯覚資産を手に入れたいなら、「一貫して偏ったストーリー」を語らなければならない。
バランスの取れた正しい主張などに、人は魅力を感じない。
それでは、人は動かせない。
「シンプルで分かりやすいこと」を、それが真実であるかのように言い切ってしまう。
本当は断定できないことを、断定してしまうこと。
組織のトップに立っている人を思い浮かべると、思考は偏っているけど、「言い切る」能力が強いんだな〜と。
ここで重要なのは、何かを主張するときは「一貫して偏ったストーリー」を語ることで、自分の人生の選択をするときは、徹底的に「正しい判断」をすること。判断のシステムを二重化させる。
二重化というのはは難しいなぁと思った部分だけど、「一つの現象に対して別の角度から考える」ことのトレーニングでできるようになるそう。
この本に紹介されている、「思考の錯覚」のまとめ
最後に、この本で紹介された、「思考の錯覚」について紹介します。
・【ハロー効果】
一つのプラスの属性値に引っ張られて、他の属性値も底上げされてしまう現象。マイナスのハロー効果もある点に注意。
・【少数の法則】
統計的には、ぜんぜん有意と言えないようなごく少数のサンプル数のデータから、そのデータが示す法則性が真実だと思い込んでしまうこと。
・【運を実力だと錯覚する】
PV向上とCVR向上への時間配分を誤らせるなど、極めて有害性の高い認知バイアスなので、特に注意が必要。
・【後知恵バイアス】
物事が起きてから、自分はそれが起きることを予測していたと考える傾向。
脳がすぐに利用できる情報だけを使って答えを出すこと。もっと分かりやすく言うと、「思い浮かびやすい」情報だけを使って、答えをだす認知バイアスのこと。「すぐに思い浮かばない」情報は、無視して判断を行ってしまう。判断に必要な情報が欠落していることに気がつかないと言う点が、非常に危険。
・【デフォルト値バイアス】
取りうる選択肢の中で、過剰にデフォルト値を選んでしまう傾向。デフォルト値を選ぶのが損な場合にまで、デフォルト値を選ぶのが損な場合にまで、デフォルト値を選んでしまうので、これも、非常に有害。
・【認知的不協和の理論】
自分の中で矛盾や葛藤(認知的不協和)がある時、無意識のうちに、その矛盾を解消しようとする。現実を変えることで認知的不協和を変えられる場合は、健全な結果になる。しかし、それが困難な場合、無意識は、認識や記憶の書き換えによって矛盾を解消する。この場合、不健康な状態に陥ることがあるので、注意が必要。
・【感情ヒューリスティック】
好きなものはメリットだらけでリスクがほとんどなく、嫌いなものにはメリットはほとんどなくリスクだらけと思い込む認知バイアス。
・【置き換え】
答えるのが難しい質問を突きつけられると、無意識のうちにそれを簡単な質問に置き換え、簡単な質問の答えを、元の難しい質問の答えだと思い込む認知バイアス。
・【一貫して偏ったストーリーを真実だと思い込む】
全ての情報を与えられるより、一貫して偏った情報だけを当てられた方が、魅力的で説得力があり正しいと感じる認知バイアス。
これらの認知バイアスは、次の脳の過剰性が引き起こしています。
・【一貫性】過剰に一貫性を求める
・【原因】過剰に原因を求める
・【結論】過剰に結論を急ぐ
感想
自分自身を振り返ってみると、実は錯覚資産を使っていたのでは?と思い当たる場面がいくつかありました。それは、とある仕事で数値実績を出したら、それを見てくれた別の部署の方が引っ張ってくれたことです。別の部署の仕事は、もともとやりたい仕事だったので大変嬉しかった。数値実績を出した仕事って、「PV」をあげることをやっていたんだなぁと。才能があるかどうかは考えず、とにかくサイコロを振って、当たればいいなという感覚でした。そして、実績をあげることで「思い出しやすさ」も増えていたのかな、と今になっては思います。
これから何かに悩むことがあったら、才能があるかどうかは考えず、とにかくサイコロを振り、成功確率をあげる!ということを考えたいものです。
お金を考えることで世の中の現象を見る「お金は寝かして増やしなさい」水瀬ケンイチ
お金の勉強。
投資会社ではなくいち投資家さんが書いた本ということで、特定の商品を勧めることはないだろうなと思い手にとりました。
インデックス投資を始めようと思っているかたにお勧め。投資を始めるためのハウツーと、さらに大切な、始めた後に値動きで一気一憂しないためのコツが参考になります。
インデックス投資とは、各種指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託に投資する方法のことです。
インデックス投資で一番大切なことは、「自分のリスク許容度を知ること」と著者。
リスク許容度とは、投資家の許容できるリスクの範囲のことで、資産運用で発生する損失を1年間でどの程度受け入れられるのかの度合い。
言い換えれば、「最悪の事態を想定する」こと。
自分のリスク許容度を知る方法としては、
1)年間の貯蓄可能金額の範囲内
2)公的年金を運用するGPIFが追っているリスクの範囲内(25%程度)
3)夜ぐっすり眠れるかどうか
の3つがあります。
さらに、インデックス投資は色んな学びに繋がると思いながら読み進めました。
1つめは、統計学
長期投資なら「平均回帰性」の力の後押しを受けることができるということ。短期的にはランダムに発生しているように見える事象であっても、長期的には平均値に収束していく性質のこと。
投資において、「資本主義経済の拡大再生産」のパワーという捉えどころのないものであっても、長期で投資し続ければ、平均回帰性の力が働いて、あるべき平均値(期待リターン)に収束していき、投資のプラスリターンとして取り出せる
世界最大のインデックスファンド運用会社である米国バンガード社は、「投資の世界で最も一貫性のある現象が、平均回帰性である」と主張。
と著者。インデックス投資の拠り所は、経済学であり統計学でもあるというのが大変面白いところでした。
さらに、行動経済学も拠り所になっています。
「敗者のゲーム」というインデックス投資のバイブルと呼ばれている本によると、
健全な長期投資においては、直感こそが敵であり、理性こそが友である
この言葉は、行動経済学という分野の研究でも裏付けられています。プロスペクト理論に夜と、人間は、利益より損失に強く反応する心の歪みがあり、特にプラスマイナスゼロ近辺でその傾向が顕著に出ることがわかっています。
人の営みの集積である資本主義経済を元にしているので、
多岐の学問にわたるんだなぁと。
他に大事だと思ったポイントをさらりと触れると
・複利の力大事。アインシュタインは複利の概念こそ「人類最大の数学的発明」と言っていた。
長年コツコツ続けるってどんなジャンルにも言えますね。
・金融機関と投資家は利益相反関係にある。たとえば投資信託の基準価額が値下がりして損をするのは投資家だけで、運用会社は損をしない。価格変動のリスクは投資家が全て負う。その代わり、基準価額が値上がりした場合は、利益はほぼ投資家のものになる
・付随して、「誰(何)がトクをして誰(何)が損をするのか?」の視点。小学校で習ったことに例えると、円高だと海外旅行がトクなど。
インデックス投資を通じて世の中の色んな現象を見る視点が得られそう。きっかけになる一冊でした。1時間ぐらいでさらりと読めます。
尾原和啓さん、チェコ好きさんの本を読んで考えた、SNSとの付き合い方 平成最後の夏ver.
今週のお題「#平成最後の夏」
どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール
- 作者: 尾原和啓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/04/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「どこでも誰とでも働ける」という本を読みました。
12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルールというサブタイトルがついており、著者の尾原和啓さん(@kazobara)は、マッキンゼー、リクルート、Google、楽天、ドコモ、サイバード、オプトといった会社で12回の転職を重ねています。
「人生100年時代」「AI時代」と言われる昨今、これからの働き方を見直す1冊…といった紹介がamazonにありましたが、私にとっては「SNS(インターネット)との付き合い方」を見直すきっかけとなる一冊でした。
いくつか印象に残ったワードを紹介します。
おすすめしているのは、自分にとって、いまいちばん大事な「検索ワード」を常時5つくらいもっておくという方法です。つねに考え、ネット上で検索されるから、「検索ワード」というわけです。
何の目的ももたずにネットを徘徊しているだけでは、ただの暇つぶしで、得られる情報の質も量もたいして上がりません。他人から与えられたテーマではなく、自分なりの目的意識、問題意識をもって情報収集したほうが、圧倒的にくわしくなるのです。
このワードが、同じタイミングで読んでいたチェコ好きさん(@aniram_czech)の「旅と日常へつなげる ~インターネットで、もう疲れない。~ 」という本の中のフレーズと重なりました。
チェコ好きさんのこの本には、デジタルデトックスや、SNSを活用する方法のヒントが書かれています。
常に世界と自分の接点を増やし、新しい枠組みやキーワードを自分のなかに取り入れていかない と、 どこかで 自分が行き詰ってしまう危険性があると、私は考えています。
みんなが欲しいものが私も欲しい。 みんながいらないものは私もいらない。そうやって、まるで互いを鏡に映し出すように、私たちは他人の欲望を自分のなかに反映し、また自分の欲望を 他人の心へ反映させるのです。
私は時間があるとついSNSをチェックしてしまう癖があります。このままSNSの沼にはまっていったら、「みんながが欲しいといったものを欲しい」「みんなが食べているものを食べたい」という状況になってしまい、「あれ、私本当は何が欲しいんだっけ?」「何が食べたいんだっけ?」という、自分本来の欲望が分からなくなるんじゃないかという危機感を最近感じていました。そんな時、この2冊の文章に出会えて良かった。
尾原さんによると、
自分自身の検索ワードは「最高のカツ丼が食べたい」というものでよいそうです。これならできそう。そこから、「卵の半熟具合とカツの混ざり具合」というふうに発展していき、
「触覚がおいしさに比重してるかも?」という仮説にたどりつき、触覚と食事をキーワードとしてもっていると、スペインの幻の3つ星レストラン「エル・プジ」に行き当たる、というふうに、どんどん入ってくる情報がかわるそうです。
検索ワード(仮説)を持っていれば情報の入り方が違ってきて、さらに、「消費」するのではなく、「生産」の視点にはいっていれば違ってくるのではとも思いました。例えば、カレー一つをとっても、単に食べるだけではなく、おいしいカレーの条件とは?スパイスの組み合わせや火を入れるタイミングはなにか?など。一つのカレーという料理も立体的に見えてきそうです。
「チェコ好き」さんの本を見つけたきっかけは、前述のようにSNSに時間を費やす時間が多く、これはまずいと思い「SNS断ち」で検索していたときでした。「SNS断ち」「デジタルデトックス」というワードを持っていたので、尾原さんの本でも「検索ワード」の部分が引っかかったんだと思います。
「検索ワード」って、自分の「好き」「興味」につながると思うんですが、それに関して、尾原さんの本に興味深い部分がありました。
楽天は、効率化の先にはない「過剰」と「嗜好性」の世界のプラットフォームにして、ナンバーワンの会社なのです。つまり、グーグル検索のように目的で一発でたどり着くことが必ずしもいいわけではなく、迷うことそのものがエンタメになるということです。楽天の店長のように、自分の”好き”を貫いて、他人と違うことをとことん追求すれば、それは「あなただけの個性」になります。
このときに重要なのは、「自分の”好き”を市場にさらして、価値を見極める」というステップです。「自分の”好き”をとことん突き詰める」ことが仕事になるのですが、その”好き”が世の中に対してどれぐらいの力を持つのか、見極める必要があるのです。
市場にさらす、というのはECサイトでモノを売る以外にも、記事に対するフィードバック数を見るといったチェック方法もあります。
最後に、チェコ好きさんの本から引用します。
みんなが見ている映画のことではなく、みんなが行っている飲食店のことでもなく、あなただけが注目している本、あなただけが注目している旅先、あなただけが注目しているニュース。みんなと同じものを発信し、リア充であることをアピールするためのSNSは「一九八四年」の世界そのものですが、あなただけが注目しているそれを発信することは、私が考えたほとんど唯一の「SNSとの上手な付き合い方」です。どっぷり浸かるのでもなく、一切接続しないともなく、接続と断絶を繰り返し、その差のなかで生まれた「他とちがうこと」を発信するツールに、SNSをしてください。
自分の中で、なんとなく「これは気になるかも」というワードを見つけたら、それは、自分なりの問題意識を見つけたということで、しめたものです。その小さなワードを深掘って、自分自身の欲望や好奇心を探す旅に出かける。そこで生まれた何かを「市場」=SNSにさらしてみる、というのが、平成最後の夏のいま、私がぼんやりと考えているインターネット(SNS)とのつきあい方です。
言葉をもらう「さざなみのよる」木皿泉
小国ナスミが43歳で亡くなるところから、この物語は始まります。最初に、ナスミが亡くなってしまって、その後どうなるの?死を悼む、悲しい物語になるの?と不安になったけど、そういう話ではなかった。これは、残された人たちの祝福の物語。
全14話でこの物語は構成されていて、それぞれのお話の主人公が異なります。ナスミの夫、姉、妹という親族、さらに、幼少期のナスミを誘拐しようとした男性、中学生の時にナスミと家出を試みた男性と、その妻。
それぞれの主人公とナスミのエピソードを描く形で、物語は進んでいきます。ナスミが亡くなった後も、周りの人たちの心の中にはナスミは生きています。ナスミを思う気持ち、残された人を思う気持ちに、ぐいぐいと物語の中に連れていかれます。
ナスミってものすごく感情が豊かで、正直で、不器用で、人として魅力的な人。こういう人が周りにいたら幸せだろうなという人です。
8話に出てきた、ナスミが元同僚に対して言ったセリフがよかった。
堕胎させられた上司の口利きで転職した会社に、今も世話になっている情けなさを、ナスミに吐露する。悔やむ元同僚に対し、ナスミは言う。
「お金に変えられないような、そんな仕事をするんだよ。みんなが喜ぶような、読んだ人が明日も頑張ろうって思うようなさ、そういう本を作りなよ」
ナスミは言葉をくれるひとだ。
この物語のあちこちに、彼女の言葉がちりばめられている。
彼女から言葉をもらった人は、時々それを取り出しながら、支えにして生きている。
いなくなった後も、誰かの中で彼女は生き続けていく。
私もナスミから言葉をもらった気がした。
私の悩みは哲学者が答えを出していた「武器になる哲学」山口周
武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/05/18
- メディア: 単行本
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自分が悩んでいることは、過去にも誰かが悩んでいて、そして答えを出していました。
これらの悩み=落とし穴は、哲学者という、わりかし「頭のいい部類の人」たちが陥った落とし穴ですから、一般人である私たちはともすれば簡単にこの穴に落ち込むことになる。つまり、こういう「思考の落とし穴」に関する指摘は、私たちが、より強く、より深く考えて行く際にはとても有用な「旅のガイド」となるわけです。
そんな「落とし穴」に落ちないため、手にとってみました。
この本には哲学、経済学、文化人類学、言語学から、現代に役立つ50のコンセプトが解説されています。
面白かったコンセプトをいくつか紹介します。
ルサンチマン
あなたの「やっかみ」は私のビジネスチャンス。
ルサンチマンは、社会的に共有された価値判断に、自らの価値判断を隷属・従属させることで生み出されます。自分が何かを欲しているというとき、その欲求が「素の自分」による素直な欲求に根ざしたモノなのか、あるいは他者によって喚起されたルサンチマンによって駆動されているものなのかを見極めることが重要です。
この太字の部分は何度も自分に問いかけたい・・・と思うところでありました。欲しいものは、誰かが欲しいと言っているから欲しいの?それとも、本当に自分が欲しいと思っているの?スマホを開くと今日も「誰か」の欲望がひしめきあっていて、そこを見極めないといけないなぁと。
フロー状態
人が能力を最大限に発揮し、充足感を覚えるのはどんな時か?
分野の異なる高度な専門家たちが、最高潮に仕事に「のっている」時に、その状態を表現する手段として、しばしば「フロー」という言葉を使ったそう。自分の技量とタスクの難易度は、ダイナミックな関係であり、フローを体験し続けるためには、その関係を主体的に変えて行くことが必要。
仕事で、ノっている時とものすごくやる気がない時があります。では、自分はどんな時をやっている時が、充足感を覚えるか?そのパターンを自分で知ること、自分の「傾向と対策」を理解することが大事だなとこの「フロー状態」の章を読んで思いました。
予告された報酬
「予告された」報酬は、創造的な問題解決能力を著しく毀損する
質の高いものを生み出すためにできるだけ努力しようということではなく、もっとも少ない努力でもっとも多くの報酬を得られるためになんでもやるようになる。加えて、選択の余地が与えられれば、そのタスクを遂行することで自分のスキルや知識を高められるような挑戦や機会を与えてくれる問題ではなく、もっとも報酬が多くもらえる課題を選ぶようになる。
人が創造性を発揮してリスクを冒すためには「アメ」も「ムチ」も有効ではなく、そのような挑戦が許される風土が必要だということであり、さらにそのような風土の中で人があえてリスクを冒すのは「アメ」が欲しいからではなく、「ムチ」が怖いからでもなく、ただ単に「自分がそうしたいから」ということです。
報酬が高いほどリスクを冒すものだと思っていましたが、そうではなく「少ない努力」で多くの報酬を得られうようにするというのは意外な結果。
格差
差別や格差は、「同質性」が高いからこそ生まれる
私たちが安易に「究極の理想」として掲げる「公正で公平な評価」は、本当に望ましいことなのか。仮にそれが実現した時に「あなたは劣っている」と評価される多数の人々は、一体どのようにして自己の存在を肯定的に捉えることができるのか。そのような社会や組織というのは、本当に私たちにとって理想的なのか。「公正」を絶対善として奉る前に、よくよく考えてみる必要があると思います。
ここも印象に残った箇所です。「公平であって欲しい」と私たちは訴えますが、本当に公平になってしまうと、そこから溢れた人はどうするのか。「公平じゃない」と評価に文句を言えるからこそ、自己肯定できているということなんですね。
差異的消費
自己実現は、「他者との差異」という形で規定される
欲求が社会的なものだとすれば、マーケティングにおける市場創造・市場拡大において最も重要なのは、「差異の総計の最大化」ということになります。これは当然のことながら、非常に大きなルサンチマンを社会に生み出すことになります。
私たちがどのような選択を、どれだけ無意識的に、無目的に行ったとしても、そこには自ずと「それを選んだ」ということと「他を選ばなかった」ということで、記号が生まれてしまう、ということです。
サービス開発、という視点では、どのように「差異」を規定するかを意識的にならないと、生き残るのが難しい。よく「他社との差別化」と口すっぱく言われるのはここにあったんですね。
シニフィアン・シニフィエ
言葉の豊かさは思考の豊かさに直結する
概念を示す言葉を「シニフィアン」、言葉によって示される概念そのものを「シニフィエ」と名付けられています。日本語では「お湯」と「水」は別のシニフィアンですが、英語には「Water」というシニフィアンしかありません。
私たちの世界認識は、自分たちが依拠している言語システムによって大きく規定されています。さらに、語彙の豊かさが世界を分析的に把握する力量に直結します。
この言葉は初めて知りました。読書をする理由は、より多くの言葉=シニフィアンを組み合わせることで、精密にシニフィエを描き出したいからだと思いました。
脱構築
二項対立に縛られていないか?
脱構築というのは、簡単に言えば二項対立の構造を崩す、ということです。
問題の枠組み自体を破壊してしまうこと。
「AかBか」で悩んだ時、そもそもその問い自体を疑ってみる。考えに詰まった時に取り入れてみたいコンセプトだと思いました。
悩んだ時、考えに詰まった時はこの本を取り出せば解決の糸口が見つかりそう。先人よありがとう・・・!そんな本でした。
自分の価値を発揮して生きる「お金2.0」佐藤航陽
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
- 作者: 佐藤航陽
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/11/30
- メディア: 単行本
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なんか意識高そう、、wとなんとなくスルーしてた本ですが、面白かった!
これからの時代、お金や経済に対する考え方がどう変化していくかについて書かれた本です。
作者の佐藤さんはメタップスという企業を経営しています。企業経営の中から見えたお金の構造や、今後10年間、何に価値が置かれるのかを、分かりやすい言葉で解説してあります。
物事の構造を考えることが好きな人や、「お金」について考えたい人におすすめの本です。
目次
お金の正体とは何か
システムの構造を分解する形で、解説しています。
構造を分解するのが好きな人にはたまらないと思います。
世の中を動かす構造とは何か。
これら3つのベクトルが相互に影響を及ぼしていて、未来の方向性を決めています。
経済システムの要素
発展する経済システムは以下の5つの要素があります。
- インセンティブ:報酬が明確である。参加する人に何かしらの報酬、明確なメリットがなければ始まりません。3M(儲けたい、もてたい、認められたい)の欲求が特に強い。
- リアルタイム:時間によって変化する。常に状況が変化するということを参加者が知っていることが重要です。
- 不確実性:運と実力の両方の要素がある。人間は生存確率を高めるためにも不確実性を極限までなくしたいと努力しますが、一方で不確実が全くない世界では想像力を働かせて積極的に何かに取り組む意欲が失われてしまいます。
- ヒエラルキー:秩序の可視化 世の中には偏差値、年収、売り上げ、価格、順位のような数字として把握できるものから、身分や肩書きのような分類に至るまで、階層や序列に溢れています。
- コミュニケーション:参加者が交流する場がある。参加者同士のコミュニケーションの機会が存在しているということです。
経済と自然の根底には同一のシステムがあります。
- 自発的な秩序の形成 誰かがルールを決めているわけでもないのに、勝手に秩序が形成される。「自己組織化」
- エネルギーの循環構造 自然や生命はこのエネルギーの循環の機能があるため、秩序を維持することが可能になる
- 情報による秩序の強化 1.2の秩序を強固にするために「情報」が必要になった。情報が必要になるのは「選択」が必要な時だけ。
まとめると、「絶えずエネルギーが流れるような環境にあり、相互作用をもつ動的なネットワークは、代謝をしながら自動的に秩序を形成して、情報を内部に記憶することでその秩序をより強固なものにする」となります。難しい!w
こうした自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を産みやすいそう。
経済・自然・脳のように、複数の個が相互作用して全体を構成する現象は「創発」と呼ばれます。今後はこのような構造を使いこなす「創発的思考」と言える思考体系が必要になってきます。
お金や経済の流れでの大きな変化
今後10年で考えると、「分散化」が大きなキーワードになってきます。分散化が進んで行くと情報やものの仲介だけでは価値を発揮できず、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力をもつようになっていきます。
「資本主義」から「価値主義」へ
大きな流れの変化として、「資本主義」から「価値主義」への変化を佐藤さんは提唱します。
資本主義に対しては多くの人が疑問を持っており、資本主義が考える「価値あるもの」と、世の中の人が考える「価値あるもの」の間に大きな溝ができており、それが多くの人が違和感を持つ原因となっています。
価値は、「1.有用性としての価値(役に立つか?)」「2.内面的な価値(個人の内面にポジティブな効果を及ぼすか?)」「3.社会的な価値(社会全体の持続性を高めるか?)」の3つに分けられます。
資本主義は1のみを重要視し、他の2つを無視してきた点が問題としてあります。価値主義では、1〜3の全てを取り扱っています。
既存の資本主義と価値主義は共存できる
すごくいいなぁ、と思ったことは、「価値主義」のみを提唱しているのではなく、「複数の経済システムは並存し得る」ということでした。今後は経済圏にも競争と淘汰の原理が働いていくことが予想されるそうです。経済圏の例として、時間を通貨とする「タイムバンク」が紹介されていました。
価値主義をまとめると、「お金や経済の民主化」「資本にならない価値で回る経済の実現」という、2つの変化が混ざった1つの現象ということができます。
価値主義が普及すると、どうなるか?
現代は「知識」そのものがコモディティ化したことも同様に、「お金」そのものもコモディティ化し、今ほど貴重なモノと考えられなくなることが予想されます。むしろ、どのように経済圏を作って回して行くかというノウハウこそが重要視されて行くのではないかと佐藤さんは考えます。
お金がコモディティ化していくと、あらゆることが満たされたということになるので、人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつあります。
人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在そのものの価値がどんどん上がっていくことになるそう。
例えば、SHOWROOMやnoteなどの自己発信プラットフォームなどですね。
これらのプラットフォームで、熱量を持って自分なりのスタイルや個性を追求していった人には、熱狂的なファンがついていきます。
転職や就職の考えかたも変わってきていて、ざっくりいうと、「自分の価値を高めておけばなんとでもなる」世界が実現しつつあるそう。
これからは、自分の興味や情熱と向き合い、自分の価値に気づき、それを育てていく。そしてその価値を軸に自分なりの経済圏を作っていくということが大事になっていくそうです。
「自分の興味や情熱と向き合う」ということは、なんとなく自分も感じていたので、やはり!と思うところがありました。もともと、興味や情熱に向き合っていた人はいたんだろうけど、それがSNSの出現によってより可視化されやすくなった。「経済圏を作る」というのはいまいちピンときていなくて、なんだろう・・・フジロックみたいな一つのフェスみたいなものでしょうか。「好き」で繋がる場を作り、そこにお金が生まれていく、というイメージ。これから考えたいキーワードです。自分の価値を発揮して生きるってワクワクする世界。
まとめ
そうはいっても「お金」って大事だよねぇ、と思ったんですが、佐藤さんはそれに対してもアドバイスをしていました。
お金が作り出す課題を解決したいと考えるには、お金に自らがくっつけている「感情」を切り離して考えること。お金や経済がもつ特徴を理解した上で、それらを自分の目的のために「ツール」として使いこなす訓練が必要。
お金に対して感情的な偏見を持って、「悪者」を見つけて叩くことはせずに、システム自体を考えることが大事とのアドバイスがありました。
お金って、自動的に悩みがくっついてくる。得体もしれない、もやもやした悩み。
こういう本を読むと、悩みを生み出す「お金」とか「経済」の構造自体が明らかになって、頭がスッキリします。まさに、最後のアドバイスにあった「自分が勝手にくっつけている感情」と切り離す、ということ。お金と感情を切り離して考えるきっかけになる。そんな本でした。
内なる言葉の解像度をあげる「『言葉にできる』は武器になる。」梅田悟司
以前より文章を書く機会が増えてきたため、勉強しようと何冊か文章術系の本を購入。その中の一冊です。
電通のコピーライター梅田悟司さんが書かれた本です。
「言葉」の作り方、つまり「思考」にフォーカスしています。
梅田さんは、「言葉は思考の上澄みに過ぎない」といいます。言葉には「外に向かう言葉」と「内なる言葉」の2つがあり、「内なる言葉」を育てることが必要だと。
それを、「内なる言葉の解像度をあげる」といいます。
「内なる言葉」を育てることはなぜ大切か?
物事を考えるという作業はどんな状況でも行っています。内なる言葉に意識を向けることができるようになれば、扱う言葉の量が増加するから。
さらに、内なる言葉に意識を向けることで、「なんとなく考えている」「考えたつもりになっている」という状況から脱することができるようになるからです。
「内なる言葉」を育てるにはどうすればいいのか?
全ては「書き出す」ことから。
面白かったのは、「人は考えているようで思い出している」ということ。
頭の中を記憶域(ハードディスク)と思考域(CPU)に分けて考えます。
人は考えている時、自分の記憶と向き合いながら考えてしまっている。つまり、考えが全然進んでいない、という状態は、思考域を使っていると思っていても、実は記憶域の中を回遊してしまっている状態であると言えます。
「記憶を回遊」している状態と聞いて、ハッとなったことがあります。「嫌なことを思い出して、再度嫌な気分になる」ということを惰性のように行ってしまっているのですが、これって単に「記憶域の中を回遊」している行為そのもの。いつでも同じところをぐるぐると考えていて、何も前に進んでいない行為と言えるんですね。恐ろしい...。
この「嫌なことを思い出す」話は置いておいて、記憶域の回遊から脱するためにどうすればいいのか。
「内なる言葉」を育てる7つの具体的ステップ
アウトプット→拡散→化学反応をさせるために、7つの手順があります。
1.頭にあることを書き出す(アウトプット)
2.「T字型思考法」で考えを進める(連想と深化)
「なぜ?」「それで?」「本当に?」で考え方を深めます。
3.同じ仲間を分類する(グルーピング)
4.足りない箇所に気づき、埋める(視点の拡張)
5.時間をおいて、きちんと寝かせる(客観性の確保)
6.真逆を考える(逆転の発想)
7.違う人の視点から考える(複眼思考)
これらを、A4の紙に書き出して行きます。
まとめ
この本では、文章を書くテクニック以前の、自分の意見を生み出すことの大切さ=「内なる言葉を育てることの大切さ」が書かれています。一朝一夕でできることではありませんが、習慣づけられたら武器になるなと思いました。
コピーライターさんが書いただけあり、「内なる言葉」や「言葉の解像度をあげる」など、言葉がどれも的確です。自分の中のぼんやりした部分に言葉を与えられた気持ち良さを感じられる本でした。