楽な姿勢でお読みください

忘れっぽいので、未来の自分への申し送り事項。主に読書感想文を書きます。

私の悩みは哲学者が答えを出していた「武器になる哲学」山口周

 

 

自分が悩んでいることは、過去にも誰かが悩んでいて、そして答えを出していました。

 

これらの悩み=落とし穴は、哲学者という、わりかし「頭のいい部類の人」たちが陥った落とし穴ですから、一般人である私たちはともすれば簡単にこの穴に落ち込むことになる。つまり、こういう「思考の落とし穴」に関する指摘は、私たちが、より強く、より深く考えて行く際にはとても有用な「旅のガイド」となるわけです。

そんな「落とし穴」に落ちないため、手にとってみました。 

この本には哲学、経済学、文化人類学言語学から、現代に役立つ50のコンセプトが解説されています。

面白かったコンセプトをいくつか紹介します。

 

ルサンチマン

あなたの「やっかみ」は私のビジネスチャンス。

ルサンチマンは、社会的に共有された価値判断に、自らの価値判断を隷属・従属させることで生み出されます。自分が何かを欲しているというとき、その欲求が「素の自分」による素直な欲求に根ざしたモノなのか、あるいは他者によって喚起されたルサンチマンによって駆動されているものなのかを見極めることが重要です。

 

この太字の部分は何度も自分に問いかけたい・・・と思うところでありました。欲しいものは、誰かが欲しいと言っているから欲しいの?それとも、本当に自分が欲しいと思っているの?スマホを開くと今日も「誰か」の欲望がひしめきあっていて、そこを見極めないといけないなぁと。

 

フロー状態

人が能力を最大限に発揮し、充足感を覚えるのはどんな時か?

分野の異なる高度な専門家たちが、最高潮に仕事に「のっている」時に、その状態を表現する手段として、しばしば「フロー」という言葉を使ったそう。自分の技量とタスクの難易度は、ダイナミックな関係であり、フローを体験し続けるためには、その関係を主体的に変えて行くことが必要。

仕事で、ノっている時とものすごくやる気がない時があります。では、自分はどんな時をやっている時が、充足感を覚えるか?そのパターンを自分で知ること、自分の「傾向と対策」を理解することが大事だなとこの「フロー状態」の章を読んで思いました。

 

予告された報酬

「予告された」報酬は、創造的な問題解決能力を著しく毀損する

質の高いものを生み出すためにできるだけ努力しようということではなく、もっとも少ない努力でもっとも多くの報酬を得られるためになんでもやるようになる。加えて、選択の余地が与えられれば、そのタスクを遂行することで自分のスキルや知識を高められるような挑戦や機会を与えてくれる問題ではなく、もっとも報酬が多くもらえる課題を選ぶようになる。

人が創造性を発揮してリスクを冒すためには「アメ」も「ムチ」も有効ではなく、そのような挑戦が許される風土が必要だということであり、さらにそのような風土の中で人があえてリスクを冒すのは「アメ」が欲しいからではなく、「ムチ」が怖いからでもなく、ただ単に「自分がそうしたいから」ということです。

報酬が高いほどリスクを冒すものだと思っていましたが、そうではなく「少ない努力」で多くの報酬を得られうようにするというのは意外な結果。

 

格差

差別や格差は、「同質性」が高いからこそ生まれる

私たちが安易に「究極の理想」として掲げる「公正で公平な評価」は、本当に望ましいことなのか。仮にそれが実現した時に「あなたは劣っている」と評価される多数の人々は、一体どのようにして自己の存在を肯定的に捉えることができるのか。そのような社会や組織というのは、本当に私たちにとって理想的なのか。「公正」を絶対善として奉る前に、よくよく考えてみる必要があると思います。

ここも印象に残った箇所です。「公平であって欲しい」と私たちは訴えますが、本当に公平になってしまうと、そこから溢れた人はどうするのか。「公平じゃない」と評価に文句を言えるからこそ、自己肯定できているということなんですね。

 

差異的消費

自己実現は、「他者との差異」という形で規定される

欲求が社会的なものだとすれば、マーケティングにおける市場創造・市場拡大において最も重要なのは、「差異の総計の最大化」ということになります。これは当然のことながら、非常に大きなルサンチマンを社会に生み出すことになります。

私たちがどのような選択を、どれだけ無意識的に、無目的に行ったとしても、そこには自ずと「それを選んだ」ということと「他を選ばなかった」ということで、記号が生まれてしまう、ということです。 

サービス開発、という視点では、どのように「差異」を規定するかを意識的にならないと、生き残るのが難しい。よく「他社との差別化」と口すっぱく言われるのはここにあったんですね。

 

シニフィアンシニフィエ

言葉の豊かさは思考の豊かさに直結する

概念を示す言葉を「シニフィアン」、言葉によって示される概念そのものを「シニフィエ」と名付けられています。日本語では「お湯」と「水」は別のシニフィアンですが、英語には「Water」というシニフィアンしかありません。

私たちの世界認識は、自分たちが依拠している言語システムによって大きく規定されています。さらに、語彙の豊かさが世界を分析的に把握する力量に直結します。

この言葉は初めて知りました。読書をする理由は、より多くの言葉=シニフィアンを組み合わせることで、精密にシニフィエを描き出したいからだと思いました。

 

脱構築

二項対立に縛られていないか?

脱構築というのは、簡単に言えば二項対立の構造を崩す、ということです。

問題の枠組み自体を破壊してしまうこと。

「AかBか」で悩んだ時、そもそもその問い自体を疑ってみる。考えに詰まった時に取り入れてみたいコンセプトだと思いました。

 

悩んだ時、考えに詰まった時はこの本を取り出せば解決の糸口が見つかりそう。先人よありがとう・・・!そんな本でした。