自分の価値を発揮して生きる「お金2.0」佐藤航陽
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
- 作者: 佐藤航陽
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/11/30
- メディア: 単行本
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なんか意識高そう、、wとなんとなくスルーしてた本ですが、面白かった!
これからの時代、お金や経済に対する考え方がどう変化していくかについて書かれた本です。
作者の佐藤さんはメタップスという企業を経営しています。企業経営の中から見えたお金の構造や、今後10年間、何に価値が置かれるのかを、分かりやすい言葉で解説してあります。
物事の構造を考えることが好きな人や、「お金」について考えたい人におすすめの本です。
目次
お金の正体とは何か
システムの構造を分解する形で、解説しています。
構造を分解するのが好きな人にはたまらないと思います。
世の中を動かす構造とは何か。
これら3つのベクトルが相互に影響を及ぼしていて、未来の方向性を決めています。
経済システムの要素
発展する経済システムは以下の5つの要素があります。
- インセンティブ:報酬が明確である。参加する人に何かしらの報酬、明確なメリットがなければ始まりません。3M(儲けたい、もてたい、認められたい)の欲求が特に強い。
- リアルタイム:時間によって変化する。常に状況が変化するということを参加者が知っていることが重要です。
- 不確実性:運と実力の両方の要素がある。人間は生存確率を高めるためにも不確実性を極限までなくしたいと努力しますが、一方で不確実が全くない世界では想像力を働かせて積極的に何かに取り組む意欲が失われてしまいます。
- ヒエラルキー:秩序の可視化 世の中には偏差値、年収、売り上げ、価格、順位のような数字として把握できるものから、身分や肩書きのような分類に至るまで、階層や序列に溢れています。
- コミュニケーション:参加者が交流する場がある。参加者同士のコミュニケーションの機会が存在しているということです。
経済と自然の根底には同一のシステムがあります。
- 自発的な秩序の形成 誰かがルールを決めているわけでもないのに、勝手に秩序が形成される。「自己組織化」
- エネルギーの循環構造 自然や生命はこのエネルギーの循環の機能があるため、秩序を維持することが可能になる
- 情報による秩序の強化 1.2の秩序を強固にするために「情報」が必要になった。情報が必要になるのは「選択」が必要な時だけ。
まとめると、「絶えずエネルギーが流れるような環境にあり、相互作用をもつ動的なネットワークは、代謝をしながら自動的に秩序を形成して、情報を内部に記憶することでその秩序をより強固なものにする」となります。難しい!w
こうした自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を産みやすいそう。
経済・自然・脳のように、複数の個が相互作用して全体を構成する現象は「創発」と呼ばれます。今後はこのような構造を使いこなす「創発的思考」と言える思考体系が必要になってきます。
お金や経済の流れでの大きな変化
今後10年で考えると、「分散化」が大きなキーワードになってきます。分散化が進んで行くと情報やものの仲介だけでは価値を発揮できず、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力をもつようになっていきます。
「資本主義」から「価値主義」へ
大きな流れの変化として、「資本主義」から「価値主義」への変化を佐藤さんは提唱します。
資本主義に対しては多くの人が疑問を持っており、資本主義が考える「価値あるもの」と、世の中の人が考える「価値あるもの」の間に大きな溝ができており、それが多くの人が違和感を持つ原因となっています。
価値は、「1.有用性としての価値(役に立つか?)」「2.内面的な価値(個人の内面にポジティブな効果を及ぼすか?)」「3.社会的な価値(社会全体の持続性を高めるか?)」の3つに分けられます。
資本主義は1のみを重要視し、他の2つを無視してきた点が問題としてあります。価値主義では、1〜3の全てを取り扱っています。
既存の資本主義と価値主義は共存できる
すごくいいなぁ、と思ったことは、「価値主義」のみを提唱しているのではなく、「複数の経済システムは並存し得る」ということでした。今後は経済圏にも競争と淘汰の原理が働いていくことが予想されるそうです。経済圏の例として、時間を通貨とする「タイムバンク」が紹介されていました。
価値主義をまとめると、「お金や経済の民主化」「資本にならない価値で回る経済の実現」という、2つの変化が混ざった1つの現象ということができます。
価値主義が普及すると、どうなるか?
現代は「知識」そのものがコモディティ化したことも同様に、「お金」そのものもコモディティ化し、今ほど貴重なモノと考えられなくなることが予想されます。むしろ、どのように経済圏を作って回して行くかというノウハウこそが重要視されて行くのではないかと佐藤さんは考えます。
お金がコモディティ化していくと、あらゆることが満たされたということになるので、人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつあります。
人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在そのものの価値がどんどん上がっていくことになるそう。
例えば、SHOWROOMやnoteなどの自己発信プラットフォームなどですね。
これらのプラットフォームで、熱量を持って自分なりのスタイルや個性を追求していった人には、熱狂的なファンがついていきます。
転職や就職の考えかたも変わってきていて、ざっくりいうと、「自分の価値を高めておけばなんとでもなる」世界が実現しつつあるそう。
これからは、自分の興味や情熱と向き合い、自分の価値に気づき、それを育てていく。そしてその価値を軸に自分なりの経済圏を作っていくということが大事になっていくそうです。
「自分の興味や情熱と向き合う」ということは、なんとなく自分も感じていたので、やはり!と思うところがありました。もともと、興味や情熱に向き合っていた人はいたんだろうけど、それがSNSの出現によってより可視化されやすくなった。「経済圏を作る」というのはいまいちピンときていなくて、なんだろう・・・フジロックみたいな一つのフェスみたいなものでしょうか。「好き」で繋がる場を作り、そこにお金が生まれていく、というイメージ。これから考えたいキーワードです。自分の価値を発揮して生きるってワクワクする世界。
まとめ
そうはいっても「お金」って大事だよねぇ、と思ったんですが、佐藤さんはそれに対してもアドバイスをしていました。
お金が作り出す課題を解決したいと考えるには、お金に自らがくっつけている「感情」を切り離して考えること。お金や経済がもつ特徴を理解した上で、それらを自分の目的のために「ツール」として使いこなす訓練が必要。
お金に対して感情的な偏見を持って、「悪者」を見つけて叩くことはせずに、システム自体を考えることが大事とのアドバイスがありました。
お金って、自動的に悩みがくっついてくる。得体もしれない、もやもやした悩み。
こういう本を読むと、悩みを生み出す「お金」とか「経済」の構造自体が明らかになって、頭がスッキリします。まさに、最後のアドバイスにあった「自分が勝手にくっつけている感情」と切り離す、ということ。お金と感情を切り離して考えるきっかけになる。そんな本でした。